目次
- 1.ガラス製の多面体の種類
- 2.一般的なガラスとクリスタルガラスの違い
- 3.クリスタルガラス=水晶ではない?
- 4.まとめ
太陽の光とクリスタルガラスのプリズム効果によって空間にたくさんの虹を広げてくれるインテリアアイテム、サンキャッチャー。100円ショップで気軽に入手できるものから高級輸入品まで、サンキャッチャーのメインパーツとなる材料のバラエティは豊富です。
今日はガラスの種類に焦点を当て、サンキャッチャーのメインパーツの選び方についてのお話をしたいと思います。お子様とのハンドメイドタイムにもフォーマルな場面での贈り物にも楽しめるサンキャッチャー作り。メインパーツチョイスの決め手は?性質や特徴を知って迷いなく選びましょう!
以前、「サンキャッチャーで虹を楽しむ生活をはじめてみませんか?」というマガジン記事を書き、作り方とともに簡単なご紹介をいたしました。
https://web.croccha.com/magazines/sun_catcher
一般に「サンキャッチャー」と呼ばれるものにはいくつか種類がありますが、主なものは以下の2つです。
①ガラス製の多面体を紐状のもので窓辺に吊り下げ、それに当たる太陽光をプリズムの要領で分光し、小さい虹色の光を多数投影するもの。
②ステンドグラスのように、色付きガラスに太陽の光を通すことで色付きの光を投影するもの。
今回は①の「ガラス製の多面体」を使ったサンキャッチャーを作る際のメインパーツの選び方についてお話したいと思います。
サンキャッチャーに使用するガラス製の多面体には、主にガラス製のシャンデリア用パーツを転用します。
形には、以下のものがあります。
・ボール形
・ドロップ形
・スピア形
・ペンデローク形
・八角形(オクタゴン)
形やカット、さらにガラスの大きさや色まで含めると多くの種類があり、それぞれ雰囲気が異なります。飾る場所の雰囲気や制作時の気分に合わせて選ぶのも楽しいのではないでしょうか?
シャンデリアメーカー(ガラスメーカー)によっては上記のもの以外にも形の種類があるので、お好みのものを探してみるのもおすすめです。
窓ガラスやガラス食器、そしてスマートフォンの画面にいたるまで私たちの生活に欠かせないガラス製品の数々。透明でツヤがあり、とても美しいですよね。
ガラスの主な原料は珪砂(けいしゃ)、ソーダ灰、そして石灰石の3つで、いずれも地中から産出される鉱物資源です。
私たちが普段目にする一般的なガラス(窓ガラスなど)は「ソーダガラス」と呼ばれ、上記の鉱物で構成されています。
昨今100円ショップで売られているサンキャッチャーのほとんどが、このソーダガラスや後述のK9ガラスにシャンデリア用パーツのボール形のカットを施したものです。クリスタルガラスには及びませんが、プリズム効果による虹を楽しむことができます。
ただ紫外線によって変色(劣化)しやすかったり、内部のアルカリ成分が表面に溶け出して白っぽくなるなど、品質上のデメリットがあります。個体差はありますが、早いものだと半年〜数か月で劣化が見え始める場合もあります。
では、クリスタルガラスとソーダガラスとでは何が違うのでしょうか?
答えは「入っているもの」です。
ソーダガラスの主な構成成分が珪砂、ソーダ灰、そして石灰石であるのに対し、クリスタルガラスは珪砂、炭酸カリウム、そして酸化鉛が主な成分です。珪砂という共通の成分はあるものの、約半分は違う成分で構成されています。
クリスタルガラスは以下のように定義されています。
「クリスタルガラスとは酸化鉛を主要成分として含むガラス、および酸化カリウム、酸化バリウム、酸化チタニウムなどを主要成分として含むガラスで、高い透明度を有し、かつ屈折率nDが1.520以上で、光沢のある美しい輝き、および澄んだ音色で特徴付けられる」日本硝子製品工業会HPより引用)
特に酸化鉛を含むクリスタルガラスは透明度が高く、光の屈折率が良いためにとても輝いており、見た目にも高級感があります。そして酸化鉛の含有量別に名称が異なります。
・フルレッドクリスタル(30%以上)
・レッドクリスタル(24%以上)
・セミレッドクリスタル(10%以上、他詳細は表を参照)
これらの「レッド」は赤(red)ではなく、鉛(lead)のことを指します。
酸化鉛が含有される分、同等の大きさの100円ショップで購入したものよりも約15%重いです。
世界中で愛されているバカラ(Baccarat/フランス)のグラス、スワロフスキー(SWAROVSKI/オーストリア)のジュエリーなどは、みなさんも一度はその名前をお聞きになったことがあるのではないでしょうか?
なぜバカラのグラスが一流であり続けるのか?なぜ宝石を使っていないスワロフスキーのガラスジュエリーが高価なのか?
バカラのグラスにもスワロフスキーのガラスジュエリーにも、クリスタルガラスの中でも最高品質のフルレッドクリスタルが使用されているのです。クリスタルガラスそのものはもちろん、そのカッティングにも高い技術が用いられています。
変色等の経年劣化が稀であり、年単位で長く美しい姿を楽しめるのも特記すべき特徴です。一流品、高級品と言われるには、ちゃんと理由があるということなのですね。
そして、上記2社以外にもフルレッドクリスタルを用いたシャンデリアパーツを販売しているガラスメーカー(シャンデリアメーカー)があります。ただ、そのほとんどがヨーロッパ方面からの輸入品です。
そのため100円ショップで手に入れることができるものに比べると価格を含め手軽であるとは言い難いです。ですが、美しい本物の輝きを希望される方には是非ともお勧めしたいパーツです。
「クリスタル」と聞くと宝石の「水晶」を想像する方が多いのではないでしょうか?不純物が少ない水晶は美しいガラスのようにも見えます。水晶を英語に訳すと「crystal」なのでよく誤解されるのですが、クリスタルガラスと水晶は似て非なるものです。
ここまでにお話してきたクリスタルガラスは人工物のガラスで、その主成分である珪砂は二酸化ケイ素(化学式: SiO2)を主成分とする鉱石(石英片岩)です。一方、石英の中でも結晶形態がはっきりしているものは一般的に「水晶」と呼ばれ、その大部分が二酸化ケイ素(化学式: SiO2)で構成されています。
つまりみなさんが「水晶」と呼ぶ鉱物の成分が、私たちの生活に欠かせないガラスにも多く含まれているのです。ガラスと水晶を見間違うことがあっても不思議はないですね。
ここまでサンキャッチャーに使用する「ガラス製の多面体」についてお話してきました。
ソーダガラスや鉛成分を含まないK9ガラスのサンキャッチャー(A)は安価で、100円ショップなどで気軽に手に入れることができます。これらで作るサンキャッチャーも、プリズム効果で虹を楽しむことはできます。小さなお子さんと一緒に手作りする際にはよいでしょう。ただ、紫外線により変色しやすかったり、内部のアルカリ成分が表面に溶け出して白っぽくなるという品質上のデメリットや経年劣化の早さの懸念があります。
一方酸化鉛を含むクリスタルガラス(B)は海外からの輸入品がほとんどで、取り扱いのある店舗が限られています。またソーダガラスやK9ガラスのものに比べ高価格のため、手軽さには欠けます。
ですが、透明度と輝度が高く、高級感があり、とても鮮やかな虹を楽しめます。変色等の経年劣化が稀で、年単位で長く美しい姿を楽しめるので、クリスタルガラスで作るサンキャッチャーは新築・転居祝いや出産祝いなどの新しい門出などの贈り物にとても喜ばれることでしょう。
サンキャッチャーのメインパーツ選びは、作る状況や使う場面、またはプレゼントとして贈る相手などによって異なってくると思います。作り手の好みも反映させられます。一緒に繋ぐビーズなどと併せて、サンキャッチャーのメインパーツ選びも楽しみましょう。
【参考】
日本硝子製品工業会:http://www.glassman.or.jp/index.php
【参考文献】
久城育夫、都城秋穂 「岩石学 I: 偏光顕微鏡と造岩鉱物」共立全書(1972)