目次
- 1.材料と道具
- 2.やり方
- 3.まとめ
補修布で破れたリネンシーツを救って以来、「買った方が早い」、「もしかしたら安いかもしれない」ものをあえて直して寿命を伸ばす、というコンセプトがすっかり楽しくなってしまいました。
西部開拓時代に想いを馳せてホームキャニング(home canning、瓶詰めの保存食作り)に夢中になり、あらゆる野菜や果物を水煮やピクルスにしていた前科(笑)がある私にとっては、「大草原の小さな家」ごっこの第2弾みたいなもの。1ドルもしないトマトやピーチの缶詰を、わざわざ湯むきからはじめて煮沸処理、ガラスの瓶に真空保存、ラベルを作って貼り付けてキャビネットにぎっしり並べる、という一連の作業にロマンを感じるのです。
この流れで前から知ってはいたけれど自分が手を出すとは思わなかった、ダーニングにチャレンジしてみました。ダーニングマッシュルームという木製のツールはこの機に購入しましたが、他の道具や材料は刺繍や編み物などをされる方にはお馴染みのものばかりです。
処分待ちだった夫の靴下や私のカーディガンなど、今までなら修繕しようとも思わなかったような衣類で練習してみました。糸の太さや素材、針の種類やサイズなどを変えながら、私なりにちょっとしたコツも分かってきました。
基本のダーニングです。
・ダーニングマッシュルーム
・ヘアゴム
・ダーニングニードル(または他の針)
・刺繍糸(または他の糸)
・ハサミ
・糸通し(あれば)
どこかに引っ掛けたのか、カーディガンの背中の部分に穴が空いてしまいました。ダーニングステッチ(ダーニング刺繍)でこの穴を塞ぎます。
ダーニングマッシュルームというツールを使います。ダーニングの土台となるマッシュルームのカサの部分と支えるための持ち手となる柄で構成された、木製のハンドツールです。
糸は、修繕したいものの厚さに合わせるとうまくいきます。このカーディガンは薄手なので、25番の刺繍糸を選びました。目立たせたくない時は似た色を、アクセントにしたい場合はコントラストカラーなどのお好きな色を合わせます。ここではやり方がよく分かるよう、縦糸と横糸にそれぞれ濃い色と薄い色を使います。
針は、選んだ糸に合わせます。ダーニングニードルとして売られている針は、日本語ではとじ針が該当します。サイズ(直径)は様々ですが、糸を通す穴が大きいのが特徴です。私は刺繍糸を使うので細めの針を使いますが、厚手のセーターなどにウールやアクリルの毛糸でダーニングする場合は太めの針を選びます。
ダーニングニードルには、先が尖ったものと丸くなったものがあります。先に張った糸を拾う時に隣の糸まで引っ掛けてしまったり、または束になった糸や撚られた糸を割ってしまうとやりにくいので、セーターやカーディガンなどには先が丸いタイプの方が向いていると思います。
タペストリーニードルやクロスステッチ用の針も先が丸いので、細い糸を使うダーニングに適しています。
このカーディガンは25番の刺繍糸の6本どりと同じくらいの厚さなので、縦糸と横糸をそれぞれ3本どりにします。
3本が交差して6本分の太さに、つまりカーディガンの厚さになるというわけです。
直したい穴が真ん中に来るよう、マッシュルームのカサにセットします。
ヘアゴムなどで留めてずれないように固定します。
私のダーニングマッシュルームにはゴムのための溝が入っているのでこのように留めましたが、ないタイプの場合は柄の部分で絞っても良いでしょう。
針に糸を通します。複数の糸を通す場合は、スレッダー(糸通し)があると大変便利です。
穴のふた回りほど外側の生地を小さくすくいます。目の大きさは、使う糸の太さに合わせると上手くいきます。
糸を引きます。
糸端は、最後に処理できるくらい(7、8cm)残します。玉留めはしません。
最初の縫い目から垂直に下ろしたところを小さくすくいます。
糸を引くと、長~い並縫い状態に。
続いて、最初の縫い目の横をすくいます。この時、目が詰まっている方が丈夫で良かろうとスペースを空けずにすくってしまうと仕上がりが厚く固くなり、ゴロゴロしてしまいます。穴の場所にもよりますが、靴下の底の部分などの場合は履いた時に邪魔になります。糸の太さと同じ幅を空けるのがポイントです。
引くと…
刺繍糸が2本、平行に並んでいるのが分かります。
2番めにすくった縫い目の横を、刺繍糸の太さの分の幅を空けてすくいます。
これを繰り返し、穴の反対側までカバーします。
最後の糸端は、処理できる程度の長さを残してカットします。
次に、横糸を張ります。本来は同じ色を使いたいところですが、ここでは分かりやすいよう少し薄い色に持ち替えています。
最初の縦糸のすぐ脇を小さくすくいます。
7、8cmの糸端を残します。
縦糸を、1本おきに拾います。この時に針の先が通常の縫い針のように尖っていると、束を割ってしまったり隣の糸を引っ掛けてしまったり、または生地まで縫い付けてしまう可能性もあります。先の丸い針の方がスムーズに糸の下を潜らせることができます。
糸を引きます。
浮いていたら、針先で優しく押し付けて(この場合は押し下げて)目を整えます。
最後の縦糸のすぐ脇を小さくすくってステッチします。
左から右へと折り返します。
右から左へ進めた時に拾わなかった糸の下を潜らせます。
糸を引きます。
浮いていたら、針の先で優しく押し下げて目を整えます。
最初の縦糸のすぐ脇にひと目入れ、再び右から左へと1本おきに縦糸を拾いながら針を進めます。
針を反対側まで渡した時点で優しく押し下げると、前の糸を真っ直ぐにすることができます。
針が左に来たら、そのまま折り返すのではなく…
マッシュルームごと180度回転させ、針を利き手(私の場合は右手)に持ち替えると作業がスピードアップします。
1段ごとに回転させながら、横糸を通します。
最後まで埋まったら…
ゴムとマッシュルームを外して糸端の処理をします。
見て分かる場合は、裏側から針で引っ掛けて…
糸端を引き出します。
目が見当たらない場合は、表で糸を針に通し、目立たないように刺して裏側に出し…
そのまま処理すると良いでしょう。2、3目潜らせて…
逆走させて…
糸をカットします。
カーディガンの穴が塞がりました。
日本でもアメリカでも流行っているのか、大変多くのクラフターさんたちがダーニングを楽しまれています。しかも単に衣類の穴を塞ぐだけでなく、わざと直したところが目立つようなマテリアルや手法を用いた「ビジブルメンディング(visible mending)」、つまり見せる補修が人気のようです。
使う糸にコントラストカラーを用いてアクセントにしたり、複数の色の糸を交わらせてマドラスチェックのような模様にしたり、またはお花やどどうぶつさんなどの形にまるで刺繍のように入れたりと、みなさんクリエイティブなダーニングを展開されています。
何度かやってみて分かったのは、きれいにしあげるには縦糸の目を詰めすぎないこと。丈夫な方が良かれと思って隙間なしにピッタリ並べると、横糸を渡しにくいだけでなく、分厚く硬く仕上がってしまいます。そでや身頃など影響のない部分もありますが、靴下などだと履いた時にごろごろして気になります。糸の太さほどのスペースを空けると上手くいきます。
また、縦糸と横糸が交差して穴を塞ぐので、両方合わせた太さを生地の厚さにマッチさせるのもポイントです。6本どりが良さそう、と縦糸にも横糸にも6本使ってしまうと、仕上がりは12本どりの厚さになってしまいます。縦糸と横糸が重なった厚さに合わせましょう。
穴のあいたお気に入りのセーターや靴下を諦める前に、ダーニングにトライしてみてはいかがでしょうか?漂白剤が飛び散って外には着ていけなくなったシャツや、薄くなって裂けてしまったデニムなど、捨てられない病の夫の引き出しには練習材料がいっぱい!5番の刺繍糸や刺し子糸などで、またやってみようと思います。