目次
- 1.材料と道具
- 2.作り方
- 3.まとめ
フェルト化させたウールのボウルを初めて見たのは、2008年、旅行先のサンフランシスコの雑貨屋さんでのことでした。手芸本などでは見ていたけれど、実物は想像以上の可愛さ!ティールとクリームのツートーンカラーがとてもスタイリッシュで、自分用のお土産にしようと手に取りましたが、大小2つセットでお値段68ドル。
ハンドメイド雑貨の価値は誰よりも理解しているつもりで、応援も兼ねてローカルのアーティストさんやクラフターさんの作品は進んで購入する方だと思いますが、その時ばかりは「これは買うものではなく作るものではないか?」と感じて棚に戻し、結果、私のフェルティングマイブームが到来したのです。
サンフランシスコの雑貨屋さんにあったのは大きめのデスク収納というイメージでしたが、私が夢中で作ったのは手のひらに収まる小さなキャンディボウル。編み上がりはくったりとしたニットの袋なのに、フェルト化させるとぎゅっと硬く引き締まって直立するその変化がとにかく楽しくて、夫に「お店でも開くの?」とからかわれるほど大量生産したものでした。
その後友人の自宅カフェに出展する機会ができ、12色の毛糸を使って編んで委託したところ、同じ方々が色違いで複数購入くださったらしく、すぐに完売したそう。「これはやっぱり写真じゃ可愛さが十分に伝わらず、実物を見ると欲しくなってしまうアイテムなんだ!」と再確認いたしました。
実際に作ってみて、「ほんとだ、写真で見るより可愛い!」を体験してみてください。
・ウールの毛糸
・短針5本(または4本)セット
・糸切りばさみ
・とじ針
・食器用洗剤
本体の編み方は、丸底きんちゃく袋と同じですが…
注意したいのが、毛糸の素材。メリノウールやカシミアをうっかり洗濯機に入れてしまって大切なセーターやストールがキッズサイズに…なんて涙の経験をお持ちの私のような方もいらっしゃるかと思いますが、ニットのフェルト化の原理はそれと同様。つまり、アクリルなどの化繊ではなく、ウールなどの天然素材でないと縮まないのです。
「ウール」とあってもよくラベルを読むと縮み防止のために化繊が混ぜてあるものや、100%ウールでも防縮加工がされている毛糸も多数出回っています。ケアが楽なので普段の編み物には適していますが、フェルティングには向きません。
これまで似たようなボウルは40個以上は作っていますが、毛糸の収縮率は本当にまちまちです。毛糸そのものの太さや性質、編み手の癖、使う洗剤、お湯の温度や摩擦のかけ具合などなど、フェルティングを左右する要因は実に様々なのです。
参考に、フェルティングの前と後の寸法を測って比較してみることにいたしました。使ったのは、ウール100%のミディアムヤーン。日本だと並太と言われる太さです。8号(5mm)の編み針を使っています。
底の部分を引いた側面のみの高さは、約3インチ(約7.6cm)。減らし目を開始するまで16段編んでいます。
フェルト化させると立体になるので比較しにくいですが、横幅は約4.5インチ(約11.4cm)。作り目が45目なので、畳んだ状態で見えているのはその半分の22目くらいでしょうか。
底の部分も、フェルティング後に形を整えて乾かす際にある程度自由が利くのであまり比較にならないかもしれませんが、直径約3インチ(約7.6cm)になっています。
それでは本題のフェルト化です。ボウルに少量の食器用洗剤を入れます。途中で足せるので、私は小さじ1くらいでスタートしています。
お湯を注ぎます。熱湯である必要はなく、手で触れる範囲内の熱いお湯でOK。
編んだ袋をボウル入れ、2、3分浸します。
ニットの表面を擦り合わせます。洗剤で手荒れする方は、手袋を着用されると良いと思います(私はミセスマイヤーズのこれだけは平気なので、素手で作業しています)。
洗剤が泡立ってきます。時々お湯につけて水分を含ませながら、ひたすら擦り続けます。
だんだんと編み目が消えていくのが分かります。細編みや長編みは編み目がしっかりしていて消えにくいので、フェルティングにはかぎ針編みよりも棒針編みの方が向いているのです。
擦り始めたばかりの時はふんわりしているし、むしろ生地が伸びたりして、大丈夫かな?と不安になるかもしれませんが、擦り続けているとだんだんと厚みと硬さが増してきます。
編み目がなかなか消えない場合は、いったんすすいでお湯を入れ替える、洗剤を追加する、熱湯をかける、冷水と温水を交互にかけてショックを与える、などなど、あれこれ試してみてください。
フェルト化が済んだら、ぬるま湯ですすいで絞ります。
形を整えながらタオルドライします。
形を整えたら、自然乾燥させます。早く完成させたくても、乾燥機には絶対に入れないこと。不自然な折り目がついて、濡らしても直らなくなってしまうことがあります。
ちょうどよいサイズの空き缶や空き瓶に被せて乾燥させると、より均一にシェイプできます。
気温や湿度、風通しなどによりますが、完全に乾くまで1日かそれ以上かかる場合もあるかもしれません。乾燥したら出来上がりです。
手触りが写真で伝わらないのが残念です!
さて、フェルト化ビフォー&アフターのサイズ比較です。無理やり2つに畳んでみましたところ、横幅はそれほど変わっていない様子です。
底もあまり変化していません。
しかし、高さは半分になっています。
サンフランシスコの雑貨屋さんで見た入れ物は高さが15cmはあったので、もしかしたら妥当な値段だったのかも?
いつもは防ぐのに必死のウールの洗濯縮み。それを逆に活かしたクラフトが、フェルティングです。アクリルなどの化学繊維が混ざった羊毛はフェルト化しにくく、また、家で洗える、洗濯機に入れられる、などと謳われた簡単ケアのウール毛糸は防縮加工されており、こちらもフェルティングには向きません。
毛糸の性質や太さなどによって収縮率がかなり変わってくるので、ひとつ小さめのものを試作してみて参考にされると良いと思います。
左奥の黄色のボウルは、今回使ったブルーの毛糸と同じブランドの色違いで、作り目の数も編んだ段数も同じです。乾燥させる際、別の形の瓶の底に被せたためちょっぴり違ったシェイプに仕上がりました。手前右のイエローのボウルは、小さく編んでいます。
モスグリーンとグレーのボウルは、10年以上前に編んだもの。それぞれ私のドレッサーの引き出しの小物入れと夫のベッドサイドののど飴入れとして現役です。編み目の数等は覚えていませんが、並太以上の毛糸で編んでいるようで、とても分厚くてガシッとした仕上がりです。毛糸は太い方がフェルト化しやすいので、初めての方は極太を選ばれると良いと思います。
フェルト化した毛糸は色味も質感も変わり、ころんとしたボウルの形も相まって本当に愛らしい佇まいです。もうすぐイースター。最近夫はこのボウルでおやつを食べています。